夢と地続き。

テストで会えないと言う彼女に対して不満を感じていたわけだが。これがテストで無く、もっと主体性のあるものだったらどうだろう。そう考えた。
簡単にありきたりな言葉で表すならば、彼女に『夢』があり、それを追うためにしばらく会えないと言うならば、僕は不満には思わない。なぜなら僕が逆の立場になった場合、不満に思って欲しくないからだ。
だが、『テスト』と『夢』の間に差異はあるのか? 僕の中ではある。僕にとってテストなんてのは『騙し騙し乗り切る』もので、無ければ無いに越した事はない。夢は違う。だけどそんなのは僕の価値観であって、押し付けるものじゃない。
彼女に、僕で言うところの小説家みたいな、具体的な『夢』は無い。だけど、自立していて、男に頼らなくても生きていける、『大人の女性』になると言うビジョンはある。一つ一つやってくる日々のアレコレを、例えばテストなんかを、きちんと努力してこなして行く。それも夢の一つに含めても良いんじゃないか。家族の平穏を守っていく平凡なサラリーマンは、夢になりえないか? 違う。それだって、誰かにとっては、きっと夢と呼んでいい。
大きな事を成す事だけが夢じゃない。特に、大きな事を成すために全力で向かっている人は、それを忘れがちだ。平凡で一般的な幸せをきちんと守る事を、過小評価しがちだ。もちろん自分にその価値を当てはめる必要は無い。でも、小さな幸せを平凡に守る他人と、大きな『夢』を成す自分に優劣は無い。その事を忘れてはいけない。
僕は、忘れてはいけないそれを、忘れていたのかもしれない。