手紙。

何年かぶりに『手紙』をもらった。
どれぐらいぶりだろう、年賀状を除くと、たぶん三年ぶりぐらいか。
日常にはネットがその名の通りに網を広げ、僕らは蜘蛛の巣にひっかかった蝶のように、何処に居たって繋がれている。
メールなんてのは、送る側が送りたい時に相手の携帯をピリリと鳴らす事が出来る、便利で安価、文字コミュニケーションを突き詰めた形なのだろう。伝えたい時に、相手をいつでも捕まえる。やっぱり蜘蛛の巣のような。
そんな中にあって、手紙はそよ風で舞い落ちる木の葉のように、奥ゆかしさがある。
伝えたいと思った時から時間を経て、実際の空間も経て、それでも相手では無く、相手のポストにそっと舞い落ちる。相手は自分がポストを開いたその時に、ふと落ち葉の存在に気付くのだ。
良いものだ、と思う。たまにしか貰わないからかも知れないが、同じ文字でも、ただの情報と実際の物質では、やはり重みが違う。まるで伝えたいと思った時から経た時間と距離が、その中身を熟成させるかのようだ。
ポストで手に取り、裏側の懐かしい名前なんかを眺めながら部屋まで歩く、このわくわくは手紙にしかない。
さて、返事でも書くとしようか。