恋は霧のように

笑い声が好きだった。
気立てのいいところが好きだった。
恋愛に対する考え方が似ていた。
条件って言うなら、それぐらいのもんだろうか。
僕が前の彼女を待つのに疲れた時に、そのコと毎日のように会い、毎日のようにメールするコトになった。偶然のようなもんだったけれど。
それだけなんだよな。たぶん。でも恋になった。
前の彼女への思いとは別種だったし、永遠に付き合える、って相手じゃないのも分かったけれど。でも今この瞬間、僕は前の彼女よりそのコにときめいたし、自分の物にしたい、ってエゴが疼いた。
それは手に入るモノより手に入らないモノが魅力的に見える、って部分すらあったのだろう。
分かってたけどさ。でもそこでその感情を押し殺して、前の彼女の所に戻ったって、僕は前の彼女を不幸にしてしまう。思い込んだまま結末の無かった恋は、よりその魅力を記憶の中で高めてしまう。一度恋をしてしまったら、自分から何らかの結果を出さなくてはいけない。それ以外の選択は後悔として残るし、なにより嘘になってしまう。
もう、しゃーないんだよ。フラれるってのも薄々感じてたし、たとえ付き合えてもすぐ分かれるだろうなんて予想もついたけど、それでもさ。ここで自分の中で諦めたって、それは終わりにはならないから。
ま、スッキリした。小さな恋に結果を出すために失ったものは、大きすぎる愛だったけれど。