伊坂幸太郎

伊坂幸太郎『重力ピエロ』を読む。
素晴らしい。久々に、ここまで読後感のいい小説を読んだ。万人に薦める事の小説だ。
正直言って、ミステリ的な部分、暗号の解読と犯人当ては、話が半分にも至らない内に終わった。完全に見当がついた。
これは僕の推理能力が優れているから、では無い。50%以上の人は見当がつくのでは無いだろうか。
読者であるところの僕が謎を解いているというのに、物語の中の登場人物がその謎に悩む。こういう小説は、普通なら、面白くない。確かに『重力ピエロ』においても数少ない欠点だと言えるが、この小説にはそれを補って余りあるものがある。
会話が洒落ている。文体が洒落ている。行動が洒落ている。
最後の方で主人公が弟にしてやるはからいなんて、僕は声を出して笑った。面白さからくる笑いではない。楽しさから来る笑いだ。最高だ。
そんな洒落た雰囲気の中で、一歩間違えば重苦しくなる世界が展開される。重要な事、救いようの無い事。それらが、洒落た口調で語られる。
決して軽んじているわけじゃない。文中にもあるとおり、重要な事はこうして語られるべきなのだ。
伊坂幸太郎。もし読んだ事の無い人が居れば、一読の事。
気分良く読み終えられる事は、保障する。