世界の終わり

アルマゲドンを見ながら思った。人類があと数日で滅びるとなれば、きっと世界は静かじゃないだろうか。
人々は欲望のままに行動し、犯罪が頻発する、なんて事は起こらない気がしてきた。
銃を突きつけられて恐怖を感じるのは、「希望」を見ているからだ。そんな状況にあっても、頭のどこかで「助かるかもしれない」と思っている。だからこそ恐怖し、泣き叫び、懇願する。
だが人類が滅びるなんていう圧倒的な状況はきっと僕らを諦めさせる。「希望」が無いから穏やかになる。静かに、その時を待つ。欲望なんてちっぽけな物で、それよりただ、穏やかさが覆うんじゃないか。
きっと僕は愛する人とコタツでみかんでも食べるだろう。
テレビでは、使命感に燃えた芸人達がそれこそ渾身のネタを披露している。それが彼らのプライドだから。きっと仕事に誇りを持っている人は皆そう。だからコタツも動く。
僕は彼女と泣きながら爆笑し、みかんで手が黄色くなったり。して。今までで一番長い時間を一緒に過ごして。たぶんベッドじゃなくてコタツでそのまんま寝て。途中で起き出して寝顔を眺めて。それで、終わってゆく。
きっと皆そんな風で。全ての人は全ての人に感謝して。全ての愛は成就して。
だから皆少し寂しそうに、でも笑って終わってゆく。きっと。