例えば。
彼女と一緒に居る時に、刃物を持った男に襲われたとしよう。
僕は命を賭して彼女を守る。そのシーンが容易に想像できる。恐らく実際にそうなるだろう。
だがそれは、彼女に対する愛だとか、そういうものではないかも知れない。
命を賭したカッコつけだ。圧倒的な現実、でも演じる。
彼女の事を好きなのは、きっと相対的なものじゃないかと思う。僕が命だとか人間だとか金だとか、多くのものに大した価値を認めていないゆえの。だから、簡単に命を投げ出してカッコをつけてしまいそうだ。
実際に死を間際にしたら、そんな事言ってられないよ、って言われるかも知れない。ああ、その通りであって欲しいと僕も願う。僕が死にたくない人間であって欲しいと、心から願う。