記憶ドライブ−フォーマット

先日書いた、飲み会で記憶が無くなった件について。
情報を集めてみると、想像以上に、僕はまともだったようだ。酔い過ぎどころか、全くの素面のように見えた、と言う証言だった。彼女を京都まで送って行くって言ってたのは、酔っ払って無理矢理言い張って、付いて行っただけだと思って居たけれど、どうやら彼女が本当にやばそうで、僕は冷静に送って行く事を決めたように見えた、らしい。
これも僕のタチの悪い特性(他人がどうなのかは知らんけど)で、最後に酒が回ってベロベロになると、まだ酔ってすら居なかったとこまで遡って記憶が消える。他の人から全くの素面に見られる状態で自分が行った事を、完全に忘却していると言うのは、正直、怖い。恐怖を感じる。
記憶繋がりで、今日、小学校時代の友達から同窓会の連絡が入った。他の忘年会と被っていて行けなかったのだが、もし何も予定が無かったとして、僕は参加していただろうか。
思い出せないのだ。小学校時代どこへ行くのも一緒で、悪さも一杯やったし、誰にも言えない様な事も言い合った。親友と呼んでもいい。そんな彼らの顔を、僕がどう呼ばれていたかを、思い出せない。彼らの名前は覚えている。だが、それは親同士も親交があり、「この間ユウキくんのお母さんと会ったよ」なんて聞かされる事がちょこちょこあったからではないか。
ふと考えてみると、中学校時代に初めて付き合った彼女の苗字も思い出せない。いつも呼んでいた下の名前はちゃんと覚えている。でも、苗字を思い出せない? 一瞬でも、愛したはずの女性の名前を。
僕はおかしいんじゃないか、とたまに思う。生活に支障があるわけではないし、別に障害だとか、そんな言葉を使う必要なんて全然無い。だけど、名前を付けられない小さな存在は不幸だ。軽度発達障害の子供達の苦しみ。彼らは「軽度」ゆえに、ちょっとした問題児と言う扱いで、集中力が無いだの、協調性が無いだの、通信簿に書かれるだけの存在だった。それが『障害』であった事に長い間、誰も気付かなかった。そんな『小さな狂気』が僕の頭の片隅に、巣食っているのではないか、と思う。誰もがおかしいと思わず、僕ですら皆こんなもんなんじゃないかと思う程度の、苦しみの幼虫。
もちろん、実際に皆こんなもんなんじゃないかとも思うのだけどね。記憶の連続こそが、自分が『存在する』と言う事だと思う。マトリックスのような世界だとしても、主観的な意味で記憶が連続していれば『存在する』ことになる。
怖いな。忘れたくないな。忘れたくない。うん。