花とアリス

映画「花とアリス」を観る。レンタルビデオ
花とアリスは、中学校から親友である。ある日、花は好きになった先輩の後を尾けていた。すると、先輩が頭を打って倒れてしまう。意識が曖昧なのを良い事に、花は先輩を記憶喪失だと言う事にして「先輩は私に告白したんですよ。忘れたんですか?」と嘘をつき、付き合い始める。嘘を繕うために、花はアリスに頼み、先輩の元カノ役をしてもらうが、先輩は次第にアリスに惹かれ始めて…。
 
花とアリスは、主人公ではなく被写体である。
普通、映画の感想として「主役の女性が綺麗だった」なんて言ったらアホかと言われるが、この映画に限ってはそれがたぶん正しい感想なのだ。ストーリーはしっかりあるが、この映画の「魅力の焦点」はそこには無い。そのストーリーを通じて移り変わって行く二人の少女の表情こそ、この映画の全てだと断言できる。
演技に関しても上手い下手とは違う次元で「自然」である。その自然に怒り、笑い、泣く少女達をフィルムに焼き付ける。その魅力を余すところ無く写し撮る。ある意味、娘の成長記録としてのホームビデオに近い存在かも知れない。ストーリーや他の役者、背景から音楽、光の陰影に至るまで、全ては二人の魅力を引き立たせるための小道具でしかないのだ。
こう書くと、少女趣味の映画に思われるかもしれない。だが、本当にそうなのである。ある種、少女趣味の素質と言うか、成長していく少女を愛でる感覚が一切存在しない人には面白く無いと思う。
で、僕にはそういう趣味の素質があるので、とても面白かった。ただまあ、大抵の人には魅力的に映るんではないだろうか。花とアリスを演じた鈴木杏蒼井優は今後も女優として成長していくと思うが、この映画は二度と創れないだろう。最後の方に出てくる広末と比べたら差は歴然だ。安定感は広末の方がずっと上なのに。きっと成長し始めたばかりの瞬間を切り取ったからこその、魅力的な表情、存在感なのだ。