前夜祭前夜祭

明日はクリスマスイブ、恋人たちの祭典です。
明日、僕と彼女は別れるかも知れません。
ドラマは何もありません。単純な、どこにでもある別れ。僕が彼女の愛を信じられなくなりました。
この一ヶ月、途端に態度の冷たくなった彼女に、愚痴ぐらいは零しながら続いて来てたのが、一週間前、ついに爆発しました。
部活の行事とは言え、会ったのに一言も喋る事無く、目も合わせずに帰ろうとする彼女捕まえて、初めて「別れよう」の言葉を口にしました。
「何かあるのか、無いなら何で避けるん、好きじゃ無くなったんなら別れよう」
僕の言葉に、彼女は今は頭がこんがらがって何も言えないから時間をくれといいました。明日、答えを聞けます。
何があったのかはわかりません。何かがあるのかどうかもわかりません。でも好きの気持ちが無いのに付き合って行くつもりはありません。
明日、ちょうど一年七ヶ月の恋は終わるかも知れません。
 
…でも、だからどうした?
僕は、僕と言う人間は『自信』が無くちゃならない。
駅伝のアンカーで、四位で襷を受け取った時、その場に居る全員に聞こえる声で、相手校の奴らにも聞こえる声で「絶対前抜いて帰って来るから」と宣言した、あの自信。完全に実力では格上の、前の選手をぶち抜いた自信と言う力で。
僕は自信が無くては僕じゃない。そしてあなたを楽しませなければ僕じゃない。
プレゼントは用意した。イベントも完璧。料理は七品、プロにも負けないフルコース。
明日別れるかも知れない彼女のための、完璧な一日。
僕には彼女しか居ない。彼女には僕しか居ない。
だから聖夜、君の最高の笑顔を前にワインを飲む、そのために。