一年七ヶ月とクリスマスイブ

別れようと言われた。
 
「純の事は好きだけれど、好きと感じるのだけれど、好きと言う事自体が何なのかずっと考えていて、でも答えが出ない。純の事を好きなのでは無く、純に好かれていると言う事が好きなのかも知れないとも思う。何ヶ月も考えているけど答えが出ない。答えが出るまで、一人で考えたい。その間、会えない。そんな状態のまま純に待っててくれなんて言えない。どれだけかかるかも分からないから、一度別れよう。その間に純に他の人との出会いがあったら、付き合ってくれてもかまわない。でももしそうなっても、いつか答えが出たらその答えだけは聞いて欲しい」
僕は「分かった、待ってる」と答えた。「自分勝手な理由で会う事さえだめだって言う私の事なんて、いつまでも想い続けられるわけない。待ってる必要なんて無い」そう言い張る彼女に僕は待ってると繰り返した。
照明を落として、キャンドルとツリーの明かりだけが揺れるクリスマスイブの僕の部屋で、二人で泣きながら喋ってた。小野リサの歌う冬色のボサノバがリピートされ、track01に戻っても、ずっと泣いていた。
真剣であると言う事は、こういう事も引き起こす。でも僕は彼女のそんなところが好きなのだ。正直、惚れ直した。だから、「他の誰か」なんて選択肢は無い。
僕も以前に真剣に考えて答えを出した。人を好きであるとは何なのか。愛とは何なのか。真剣に考えた末に出した僕なりの答えは言った。でも彼女が自分自身で答えを出さなければ意味は無い。誰かに言われて「分かっても」それは答えが出た事にはならない。
好きで仕方なかった相手で、しかも今回の事で惚れ直したのだ。会えないのは辛い。でも、僕は待っていよう。その自信はある。そう思っていた時、ようやく泣き止んだ彼女が「しばらく会えへんな」って言った。僕は「でも待ってるよ」って言おうとした。でもつい、「嫌やー」と言ってしまった。泣き腫らした目で、自分の言葉に笑ってしまった。そしたら彼女も吹き出したように笑ってくれた。
その笑顔を思い浮かべて、僕は待とう。