二時頃。
この恋の終わりで泣く事は無いんだと思ってた。
1年ちょっと前の人生最大の失恋のあと、もうずっと人を好きになる事なんて無いのかなとか思ってて、でも好きになれて、本当に嬉しくて、一緒に居ると楽しくて。
でもその恋が、例え彼女に好きになってもらえたとしても何にもならない恋だったと知って終わって。
本当は聞きたい事が山ほどあったけど押し殺した。彼氏が居ても好きだったなんて言葉を微塵も疑わなかった。友達に「そんなヤツ付き合わんで良かった」と言われても彼女を悪者には絶対しなかった。もちろん、二番目を受け入れるなんて道を選ばなかった。
だってそうだろう。自分のものにならなかったからって、傷つける対象にして良い訳が無い。疑う対象にして良い訳が無い。罪を押し付けて良い訳が無い。
そんなのは恋じゃない。愛じゃない。僕はそう思う。
自分で正しいと思う事を貫く作業は孤独で辛い。
でもそれをやりぬいたつもりだった。涙を流す事なく。
時限爆弾は、雪と音。
最後の日に持って行ったカバンから、雪が落ちた。
それを見て、つい僕はその曲をかけた。
彼女が「いい曲だ」って教えてくれた曲。aikoの二時頃。
この恋の終わりで、泣く事は無いんだと思ってた。
そんなわけ無いのに。
もし、いつか、作り笑いじゃない笑顔であなたと話せる時が来るとしたら、この曲の事を聞きたいな。押し殺した、他の多くの質問よりも。
「こんな曲」を、僕に、「せつない曲ですよね」なんて言いながら聞かせてくれた時、何を思ってたのか。
でも、今はまだ。
彼女の電話番号だけに設定してたこの曲が鳴っても、僕はそれを取れない。