バイトで。

バイト先で、「俺の方が仕事ができる。俺の勝ちだ」みたいな事を言う奴が居た。「ああ、せやな」ぐらいに軽く返しておいたけど、これは中々に面白い言葉だ。
まず、『勝ち負け』と言う事について。『勝者』と言うのは、同じ目的を持った複数の個人やチームがあって、その上で、目的を果たした者の事だ。(条件として、一方が目的を果たした場合、他方が目的を果たせないと言う事が必要になる)
例えば野球で、Aは相手より高い点数を取る事を目的として、Bは相手より低い点数を取る事を目的としていた場合、どんな結果になろうとも、勝者は存在しない。つまり、目的の一致があって、初めて『勝者』が存在しえるのだ。
バイト先での話に戻ろう。もし僕と彼が、共に『仕事ができる事』を目的としていたのならば、なるほど、僕より仕事のできる彼は勝者だ。しかし、そうではない。
彼の間違いは、目的と手段を取り違えていた事だ。バイトをする目的は、あくまでも『金を得る』事にある。そのためにバイトをしているはずだ。僕も彼も。仕事をするのは、『金を得る』ための手段だったはずだ。しかし、彼の中では、仕事をする事が目的のように感じられている。
仕事ができて、バリバリ働いても時給850円。適当に働いても時給850円。こんな状況で、勝ち負けを持ち出す事に意味はない。勝者とは、目的をうまく得る事の出来る者だ。手段をうまくこなせる者ではない。
さらに言うと、この場合の『金を得る事』に関しても、どれぐらい働いてどれぐらい稼いだかが問題になるため(100時間働いて8万円稼いだ者と、10時間働いて1万円稼いだ者が居て、8万円の方が多いから前者が勝者とは言えないだろう)、結局のところ『金を得る事』に関しても勝者は決まらない。時給が一律850円である限り、誰も勝者にも、敗者にもなれないのだ。