時は来たれり。

ついに明日、プライドが行われる。ミドル級GPであるが、真のメインはヘビー級タイトルマッチだ。
僕がこの戦いを見始めたのは、『桜庭ホイス』以降であり、ミルコの参戦とともにであった。
あの日、マイケルマクドナルドに負けて後の無くなっていた『K-1ファイター』が、ほとんど練習期間の無いなか、純プライドルールでは無いが、すでに総合で大きな結果を残していた藤田和之と戦った。総合初心者の僕はその差がどれほどの物か分かっていなかったが、ナレーションなどの言葉から、それが『藤田が勝つ試合』だと言うのは分かった。
勝負は瞬間だった。タックルに来た藤田に対するミルコの膝は、額をパックリ切り裂いた。
お互いに熟知された技術の上での戦いとは違う。K-1がすでに失おうとしていた『一撃』『瞬間での決着』がそこにあった。いや、それは結果から思った事ではない。ミルコと藤田が向かい合っている時点で、そこには『瞬間の匂い』がしていた。ほんの少しのミスが全てを失わせる匂いが。
今では総合の技術も圧倒的に進化している。それに伴い、瞬間の匂いは失われ始めている。
それでも総合の見方がわかり始めた今では十分に面白い。現在のK-1よりは十分にその匂いも残っている。だが、僕が見始めた頃の、プライドに惚れたあの匂いを残した戦いを毎回するのはミルコだけだ。
そのミルコが、追い続けたヒョードル戦に辿り着いた。これまでに二年待った。ミルコの歳を考えれば、全盛期の状態で挑めるのはこれが最初で最後になりかねない。一瞬の匂いとともに、背負う物の大きさでもレベルが違う。ヒクソン対高田、桜庭対ホイスの決闘の、正当な後継者と言えるレベルだ。そんな大きな物が、一瞬で失われる戦いなのだ。
正座をして見る、今世紀最初の決闘。
ただし僕はテレビ放送を待つしか無いので、とりあえずテレビ放送までネット断ち!!